新宿区内を散策して集めた「タイムトリップ」の記事です
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タイムトリップ
中井御霊神社 6月/2001 by 清水裕二
私は,塾経営の傍ら予備校でも教えています。ある日,T橋さんという女生徒からおもしろい話を聞きました。「先生,わたし中井で新聞配達をしているんですが,配達区域の神社に縄文土器が山のようにあるんですよ!」私は、神社と土器という組み合わせが面白かったので、くわしく話を聞くことにしました。
神社というのは中井御霊神社のことでした。この神社は古くから中井の鎮守様と慕われ,区の文化財の「雨乞いのむしろ旗」があります。ここの宮司さんが庭を掘ったら(昭和21年ころ)土器が山のように出て,調査を進めた結果「落合遺跡」の発掘がされたとのことです。今では境内に多くの土器が保管されているとのことです。興味深い話だったので,「合格したら案内してください。」と私は言いました。無事彼女は合格して,さて取材ということでその神社に行きました。
宮司の磯部さんは,まさに好好爺という方で喜んで取材に応じてくれました。まず,「どこから土器が見つかつたのですか?」と聞くと,「そんなもん,雨降ったらその辺に顔を出していたんだ。ゴロゴロあったよ。」私は驚きました。戦前は,土器などに価値があるとは思っていなかったので気にもしていなっかたそうです。
戦後,考古学が発展していくなかで,磯部さんは「これらの土器には価値があるかもしれない。」と考え,近所に住んでいた早稲田大学考古学研究室の滝口教授に相談して,たった2人で調査を始めました。私費による調査ですので十分にはできませんでしたが,この調査によリこの地域に縄文時代の集落跡がある可能性が指摘され,昭和29年に区が「落合遺跡」を発掘しました。
磯部さんは,この遺跡発掘の大功労者だつたのです。しかし彼の名も,このエピソードも埋もれてしまっています。
取材の最後に,「土器みるかい?」といって倉庫に案内してくれました。「今はあんまり珍しくないんで返されて来るから保管が大変だよ。」とボヤいていました。小さな資料館ならいっぱいになるほどの土器が保管されていました。
これだけの状態のいい土器が人目に触れないことをもったいないことだと思いました。「落合遺跡」の方は、目白学園内にミニ博物館として整備されていますが,神社の方は何も無しとは情けないことです。この神社に行っても,ここに土器があるとは誰も気がつかないでしょう。もし行ったら,磯部さんに声を掛けてください。きっと喜んで土器を見せてくれるはずです。